「今日、クリスマスってよ」


「私はもう帰るので……」

は?

気づけばまた俺の元から去ろうとする水原。


流石に今度はさせねぇよ……!

さっきの教訓から、ぱっと素早く立ち上がってその手を掴もうとしたとき。


「待って。……はいこれ」

そう言って鞄を漁った佑香は水原にポケットティッシュを渡していた。


「え?」

「顔、拭きな?」

「ぁ、ありがとうございます……」


佑香に先を越されたせいで行き場を失った手は宙ぶらりんのまま。


いや、水原が帰るのを阻止できたのはよかったけど。

……なんか釈然としねぇ。


「それよりも」

くるりとこっちを向いた佑香の、じと……とした目が俺を責める。


……さっき水原と話してる時は笑顔だったくせに。


「拓真、あんた女の子泣かせてんじゃないわよ」

「……うるせー」

予想通りというかなんというか。

正直自分でもそこは反省してるので、なにも反論できない。


だからといって実の姉にそれを指摘されて素直にはいそうですとは言えねぇよ……。