僕のクラスに、転入生が来た。こんな時期

に、珍しいなぁ。



「それじゃあ、櫻井は…高橋の隣が空いてい

るから、そこに座れー。授業始めるぞー」



え、僕の隣…。凄く明るそうな子だから、僕

の苦手なタイプだ。



「高橋くんって言うの?よろしくね」

「あ、うん」



変な返事になってしまった。でも今後彼女と

関わることもないだろうから、別に気にしな

い。大人しくしていよう。今までと、何ら変

わらないのだから。僕には、人と関わらない

で過ごす方が、ずっと向いていると思うか

ら。

         *

 普段と同じように授業を受けて、昼休みの

時間になった。お弁当箱を開こうとしたと

き、不意に手が止まった。



「ねぇねぇ櫻井ちゃん。好きなドラマとか、

ある?」

「笑ちゃんって呼んでいい?」



隣の席に、人が集まってきた。人が苦手な僕

にとっては、辛い空間でしかない。息ができ

ないくらいに苦しくて、何も考えられずに立

ち上がる。ガタン、と椅子が倒れた音が聞こ

えたが、振り向かずに走り去った。

         *

 結局、屋上まで来てしまった。いつも辛い

ことがあると、ここに、逃げ込むようにして

来るのだ。僕のお気に入りの場所。お腹が空

いたなぁ、と思ってポケットに入っていたキ

ャンディーを取り出す。宙に放り投げてか

ら、カラン、と音をたてて口に入れた。ミン

トの香りが口いっぱいに広がって、嫌なこと

を全部忘れられる。お弁当が惜しいが、今教

室に戻ることはできないから、ここで時間を

潰そう。日光が心地よくて、瞼を閉じた。そ

れからの記憶は、ない。



「…くん、だよね?」



突然、耳元で声がした。眠い目を擦って声の

主を探す。あ、転入生だ。僕に何の用だろ

う。



「隣、座ってもいい?」