セシリオは自信満々に頷く。
タイタリア王国の貴族には、初夜が明けた翌日は夫が甲斐甲斐しく妻の世話をするのがよいとされる風習がある。甲斐甲斐しく世話といっても、なにも難しいことはない。妻よりも先に起き、部屋に花を飾り付けて目覚めに合わせて部屋に朝食を用意する。そして、新妻に優しく声を掛けて労わるのだ。
結婚するに当たって、ドリスから手渡された数代前の当主の手記には、これをせずに欲望の赴くままに新妻を扱うと酷い憂き目にあうと戒めの言葉が書かれていた。そのため、セシリオはドリスやクラーラと明日の朝の手筈を綿密に相談した。
ようやくだと、セシリオは感慨深く目を閉じた。
以前、ブラウナー侯爵が来た際に話を立ち聞きしたサリーシャが誤解をして屋敷を飛び出すという事件がおこった。連れ戻した際に、様々な成り行きによりセシリオはサリーシャを抱いた。そして、大いに気分が盛り上がったセシリオはそのままの勢いで、その日の夜からサリーシャを三階の部屋に移動させようとした。しかし、そうは問屋が卸さなかった。
「クラーラ、サリーシャを三階の部屋に移そうと思う」
「いいえ、いけません」
「いけない? なぜだ? サリーシャは婚約者だし、もうすぐ結婚する。何も問題はない」



