セシリオは眉をひそめた。アハマス中心部の領主館直轄地域の治安はセシリオを頂点とするアハマス軍の治安維持部隊が受け持っている。しかし、五つの地区については各地区の長官の下で働く警ら隊に任せていた。街道で窃盗団が頻出し、その警らを行う者たちにまで被害が出ているの言うのだ。
「それは看過できないな。他の地区はどうだ?」
セシリオが他の四地区の長官達の顔を順番に眺めていく。皆、首を横に振るだけだった。
「デニーリ地方だけか。では、治安維持軍を応援に派遣しよう。モーリス、明日にでも相談しよう」
「ああ、わかった」
モーリスはセシリオを見て小さく頷いた。
その会合がお開きになると、セシリオは着ていた軍服の首元を緩めてふうっと息をついた。式典用の軍服は装飾が多く、普段の軍服より窮屈だ。それに、勲章が沢山ついていて重い。
「俺は戻る。モーリス、後は任せていいか?」
「ああ、そうしてやった方がいい。結婚式当日に嫁さんを放っとくのはまずいぞ。こっちは任せろ」
モーリスは笑顔で片手を上げ、セシリオの片手にタッチをする。そして、思い出したようにセシリオの顔を見た。
「そう言えば、前に言っていた明日の手筈は大丈夫か?」
「大丈夫だ。念入りにシミュレーションした」



