辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


 クラーラは優しくサリーシャに声を掛けた。
 貴族の夫人は朝食を振舞ったりはしない。朝食は屋敷の料理人が用意するものだ。
 しかし、明日の朝は特別だ。普段なら食事はダイニングルームで戴くが、新妻の体調を考慮して、いつも以上のごちそうが部屋まで運ばれる。そして、新郎は新妻の目覚めに合わせてそれらを完璧に用意し、愛する妻を労るのが慣例だった。

「やっぱり初日は特別なのね?」
「結婚して最初の朝は特別ですから。明日だけです」
「……そう」

 サリーシャは青ざめた。
 やはり、以前姉達に聞いた通りだった。結婚式の翌日の朝ごはんはラブラブな新婚生活の幕開けにおいて、重要なアイテムのようだ。貴族でも初日だけは妻が朝食を用意しなければならないらしい。
 準備期間が半年もあったのに、なんたる不覚。自分が作った朝ごはんが不味すぎてセシリオから幻滅され、嫌われてしまうかもしれない。それだけは回避しなければならないと思った。

「セシリオ様もわたくしとそんな朝ごはんを迎えたいのかしら?」
「もちろんです。ずっと楽しみにしてましたわ」

 それを聞いた瞬間、サリーシャは決意した。こんなところで水を売っている場合ではない。今すぐに料理長に朝ごはんの作り方を教授して貰いに行かねばならない。楽しみにしてくれているセシリオを失望させたくないのだ。