「そういえば……」
サリーシャは遥か遠い記憶を辿っていた。あれは確か、まだ田舎の村でサリーシャが暮らしていた頃のことだ。近所の幼なじみに嫁いだ姉は農作業で忙しい母に代わり、妹や弟の世話をするために度々実家に帰ってきた。姉の友達も遊びに来ることが多く、サリーシャは姉夫婦やその友人夫婦の仲睦まじい日常をにこにこしながら聞いていた。そんななか、印象に残った台詞がある。
「彼はね、朝起きてわたしの朝ごはんを食べるときに幸せだなって感じるって」
「あー、わかるわ。うちの人もそう言うの。朝起きたときにいい匂いが香ってくるのがいいって」
「朝ごはん?」
同じテーブルに向かってお茶を飲んでいたサリーシャは、きょとんとして聞き返す。姉とその友人は屈託なく笑った。
「結婚したら、二人で食べる朝ごはんは特別なのよ。寝ている旦那様を起こして、『あなた、朝ごはんが出来てますよ』って言うの。肝心なのは初日ね」
「そうよ。だって、二人で一夜過ごした最初の朝だもの。サリーシャも、あと何年かしたらそんな日が来るわ」
「ふーん? じゃあわたし、結婚式の翌日は張り切って朝ごはんを作るわ。それで、『あなた、朝ごはんが出来てますよ』って言って旦那様を起こすの」
「そうそう。楽しみね」
「うん!」



