辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2


「奥様も是非ご一緒にどうぞ」
「ええ、ありがとう」

 サリーシャも頭だけ下げて会釈する。アルカンが去ったあと、セシリオは浮かない表情を浮かべた。

「デニーリ地区はアハマスで一番の農業地帯なんだ。大きな河川が通ってるから、土地が肥沃でな」
「そうなのですね」

 サリーシャは話を聞きながら相槌をうつ。アハマスで一番の農業地帯で害虫の被害というのは、領主として頭が痛い問題なのは容易に分かる。

「もう、かれこれ三年くらい視察に行ってない。近いうちに──」

 セシリオが何かを話し始めたが、その声はすぐに明るいかけ声にかき消されてしまった。

「閣下、おめでとうございます」
「あ、ああ。ありがとう」

 次に現れたのは眼鏡をかけた、いかにも賢そうな顔をした文官風の男性とその妻だった。そうして、二人は永遠に続くのではとも思える長い祝辞の列に、また引き戻されたのだった。