「奥様も是非ご一緒にどうぞ」
「ええ、ありがとう」
サリーシャも頭だけ下げて会釈する。アルカンが去ったあと、セシリオは浮かない表情を浮かべた。
「デニーリ地区はアハマスで一番の農業地帯なんだ。大きな河川が通ってるから、土地が肥沃でな」
「そうなのですね」
サリーシャは話を聞きながら相槌をうつ。アハマスで一番の農業地帯で害虫の被害というのは、領主として頭が痛い問題なのは容易に分かる。
「もう、かれこれ三年くらい視察に行ってない。近いうちに──」
セシリオが何かを話し始めたが、その声はすぐに明るいかけ声にかき消されてしまった。
「閣下、おめでとうございます」
「あ、ああ。ありがとう」
次に現れたのは眼鏡をかけた、いかにも賢そうな顔をした文官風の男性とその妻だった。そうして、二人は永遠に続くのではとも思える長い祝辞の列に、また引き戻されたのだった。



