辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

「サリーシャは、いつになったら俺のことを名前で呼んでくれる? 結婚したらそうなるかと思ったが、ちっとも変わらない。それなのに、他の男、会ったばかりのパトリックのことすら親しげにその名を呼ぶ」
 
 恨めしげに目を細めるセシリオを見つめ返し、サリーシャはなにも言えなかった。セシリオのことを『閣下』と呼んでいたのはいわば癖のようなもので、意図的に名を呼ばなかったわけではない。

「きみが……、俺のような武骨な男ではなくやはりパトリックのような貴族らしい男に惹かれるのだろうかと心乱された」
「……──あり得ません。パトリック様は閣下の甥であり、それ以上でもそれ以下でもありません」

 そんなことを思われていたなんて、夢にも思っていなかった。
 サリーシャの中で異性としての好意がある男性は後にも先にもセシリオしかいない。