辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

「うん、そう。川沿いで、光る虫がたくさん飛んでいるんだよ。一緒に行った姉上はその場では綺麗だって楽しんでたんだけど、連れて帰るって従者に捕まえさせたら黒い虫がいて、本当に大騒ぎだった。でも、サリーシャ様は平気だね」
「光る黒い虫……」

 それは、蛍のことだろうか。
 サリーシャが昔住んでいた田舎にも、ある時期になると川沿いに無数の光が飛び交う景色が見られた。夜に子どもが出歩くのはいけないことだったけれど、収穫祭とその季節だけは特別にそれが許された。兄弟姉妹達と手を繋ぎ、いつまでもその景色を眺めていたものだ。

「……シャ……」
「サ……シャ様」
「サリーシャ様!」
  
 名前を呼ばれて我にかえると、怪訝な表情のラウルがこちらを見上げていた。昔のことに思いを馳せてぼうっとしてしまった。

「ねえ。僕、あっちに行ってきていい?」