辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

 パトリックは十六歳。次の王宮舞踏会で社交会に出て大人として認められ、多くのご令嬢とダンスを踊ることになる。その中には彼の未来の花嫁もいるかもしれない。

「もうダンスの練習をしてもいいのですか?」
「いいと言われたけれど、下手くそだとからかわれたくないから……」

 またごにょごにょと濁したような声が聞こえる。
 ダンスの先生が足を悪くした教え子に対して下手くそなどとからかうはずもないので、きっとレニーナかローラのどちらか、親しい親族がダンスの相手をしているのだろう。

 サリーシャはその横顔を見つめた。三つしか年は変わらないし背もサリーシャより高いが、男性の十六歳はまだ成長期だ。その表情には、子どもっぽさが残っていた。

「では、わたくしがお相手しましょうか?」
「え? ……いいの?」
「もちろんですわ」

 驚いたように目をみはるパトリックに、サリーシャは笑顔で頷いた。