辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

 『アハマス閣下も、お気の毒に──』

 最後に聞こえた台詞が、反響するように耳に響く。

 セシリオは強く、優しく、温かい。辺境伯として王室の覚えもめでたく、アハマスの皆に慕われている。サリーシャはセシリオと結婚して、本当に自分は果報者だと思っている。

 ──でもセシリオ様は、本当にわたくしでよかったのかしら? 

 そんな不安が湧き上がってくる。
 元婚約者のマリアンネは侯爵令嬢かつ、タイタリア一の武器商人の娘だった。でも、サリーシャの引き取られたマオーニ伯爵家はアハマスと領地が遠く離れているだけでなく主力産業が農業であり、アハマスには何も利益をもたらさない。

「お飲み物はいかがですか?」

 目の前にグラスが差し出された。ハッとして顔を上げると、目の前には穏やかな笑顔を浮かべた給仕人が立っていた。彼の持つトレーにはたくさんのグラスが並び、色とりどりの液体が揺れている。