辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

「アハマス閣下のことも、きっと殿下から紹介されたのではなくて? 殿下から紹介されたら閣下も断れないわよね。本当に、見た目はおっとりしいてるけど相当ね」

 耳を塞ぎたいような辛辣な言葉の数々に、スーっと気持ちが冷え込んでゆく。飲み物を取りに行くには、彼女達の後ろを通りすぎなければならない。
 噂好きな貴族の世界で、陰口はつきものだ。これまでも、様々な人に対するたくさんの陰口を耳にしてきた。
 聞き流せばいい。そう思ったのに、内容が内容だけにサリーシャの足は床に貼り付いたように動かなくなった。

「アハマス閣下も、お気の毒に──」
 
 ご令嬢の一人が、ため息混じりにそう発する。 
 ドクン、と心臓が跳ねた。

 ──と、そのとき、凛とした女性の声が響いた。