辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

「ごめんなさい。初めて着るドレスで、袖に引っかけてしまったわ」

 ユリシアのドレスは肘の部分から袖が鐘のように大きく広がるベルスリーブのデザインになっていた。サリーシャの方へ体を寄せていたせいでグラスをその袖に引っかけてしまったのだろう。
 幸い、中身は殆ど入っていなかったので零れたのはごく僅かだ。慌てたように手持ちのハンカチで零れた飲み物を拭こうとするユリシアを止めて、サリーシャは近くにいた使用人を呼ぶ。

「テーブルに零してしまったの。拭いてくださる?」
「かしこまりました」

 サリーシャは辺りを見回した。あいにく、近くに飲み物を配っている給仕がいない。待っているよりも自分で取りに行った方が早そうだ。

「ユリシア様、わたくしは別の飲み物を取って参ります」
「ごめんなさい、サリーシャ様」
「いえ、大丈夫ですわ。すぐ戻ります」