辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

 以前、セシリオは小さかったサリーシャの言葉に精神的に救われたと言っていた。だから、サリーシャの窮地を知り助けようと思ったと。

 これを一言で言い表すなら……、『同情』もしくは『恩義』だろうか。決して『愛情』ではない。
 少なくとも、マオーニ伯爵邸を訪ねてきたとき、セシリオはサリーシャのことを愛していたわけではないはずだ。
 もちろん、今現在のセシリオの与えてくれる愛情に偽りはないと信じている。けれど、ふと今まで思ってもみなかったことが脳裏をよぎる。

 ──セシリオ様は、もしもあの頃のことがなかったとしても、わたくしを好きになって下さっていただろうか。

「あっ」

 カシャンという音と共に小さな悲鳴が聴こえて、顔を俯かせてサリーシャはハッと顔を上げた。同じテーブルに向かって座っていたユリシアのグラスが倒れ、中身が零れている。

「ユリシア様、大丈夫でございますか」