辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する 2

「サリーシャ様、ごきげんよう」
「アハマス夫人、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「サリーシャ様──」

 次々と声を掛けられて、サリーシャは困惑した。顔見知りから全く知らない人まで、にこやかな表情を浮かべて挨拶してくるのだ。

「そのドレス、凄い効果だな」

 昨日との周りの人々の反応の違いに、セシリオも半ば呆れ顔だ。
 新しい王太子妃であり、未来の王妃であるエレナが贔屓(ひいき)にしていると知らしめることは、サリーシャの想像以上に絶大な意味を持つようだ。

「セシリオ!」

 そんな中、セシリオの名を呼ぶ声がしてサリーシャはそちらを振り返った。目を向ければ、一人の男性が穏やかな笑みを浮かべて片手をあげている。
 サリーシャはその男性を見て怪訝に思った。皆がセシリオのことを『アハマス閣下』と呼ぶ中、この男性だけは『セシリオ』と親しげに呼び捨てにしたのだ。