心地よいまどろみの中で眩しさを感じたサリーシャは、ゆっくりと意識を浮上させた。

 瞼を開けば目に入ったのは見慣れない天井。木目をそのまま活かした梁と真っ白な天井はとてもシンプルな造りで、そこからあまり飾り気のない照明具がぶら下がっている。
 手を顔の横に添えて鋭い光を遮ると、サリーシャは視線を移動させた。窓のカーテンが少しだけ開いており、そこから朝日が差し込んでいたようだ。

 窓際によって外を覗くと、手入れの行き届いた庭園が見えた。花々が咲き乱れるような凝ったものではなく、緑の植栽と広い芝生、その合間を縫うように散歩のための小径が配置されている。
 その芝生の中で剣の素振りをしている人物を見とめ、サリーシャは目を凝らした。短かめの茶色い髪にがっしりとした大きな体つき。いつもの深緑色の軍服を着ていなくともわかる。あれはセシリオだ。王都のタウンハウスに来ても、鍛錬は欠かさずにしているようだ。

「セシリオ様だわ。あぁ、朝からとても素敵ね」

 サリーシャは窓枠に手を添えてその姿に見入った。セシリオが剣を振るたびに朝日が反射してキラリと光る。

 恋というものは不思議なものだ。なんの変哲もない光景が、これ以上ないほどに素敵に見えるのだから。初めて会った日にはただ大きな人だとしか思わなかったセシリオのことが、今は世界一素敵に見える。そして、それは間違いなく真実であるとサリーシャは確信している。