先輩を置いていかないよう一人だけの時に比べてゆっくりしたペースで歩き出す。刹奈先輩は運動も得意だが、それでも男女の身体能力の違いというのはある。俺だけのペースで行く訳にはいかないし何より恋人と二人でいるのに並んで歩かないのは悲しすぎる。

「あーあ、それにしても雅志くんは酷いよ。こうやって二人で登校できるの今日しか無いんだよ?他の日はぜーんぶ朝練……隣に君がいない私の寂しさが分かる?」
「はいはい……分かりますからその顔を辞めてください。ファンの人達に見られたら俺が殺されちゃいます」
「むー……あの子達はちょっと過激なんだよ。本当は見せつけてやりたいくらいなのに」

ぷぅっと頬を膨らませて不服そうに言う。普通の人がこんな仕草をしたら大惨事だろうが、そうはならないどころか可愛さをより引き立たせる結果になっているのは刹奈先輩クオリティ……というやつだろう。それくらいこの人は可愛すぎる。それにしても、ファンクラブの会員を「あの子達」呼びとは……これも刹奈先輩にしか許されないことだ。