6月のある日、楽都くんが言った。
「奏。ピアノ弾きたい。」
「え?うん。」
放課後、音楽室に行った。
半年弾いてなかった。

私がすごく緊張した。
そばにいた。

楽都くんが、ピアノに向かって座った。
深呼吸をして弾き始めた。
前ほど、スラスラと弾けてはいないが、
切なくしっとりとした音。まさに、楽都くんの音だった。
私は、号泣してしまった。

「弾けた。前ほどは、無理だけど、ゆっくりなら、自分の弾きたいのが弾ける。」
とても嬉しそうだった。
私も嬉しくて、抱きついた。
「楽都くんの音。私の大好きな楽都くんの音。ありがとう。」
「うん。」

 それから、私たちは、また、前みたいには、放課後、音楽室に行き、ピアノを引き合ったり、お互いの家で弾いたり、まったりした過ごした。