バレンタインのチョコブラウニーを護に渡してからというもの、私はソワソワしてしまった。浮き足立つ、というのがピッタリな精神状態だった。

 でも護は私に、あれが本命だったのか、それとも義理だったのか、全く尋ねてこなかった。

「あれ、おいしかった。オレ、ああいうスイーツ好きだわ」

 そう感想を述べただけだった。

 それ以上はバレンタインデーの件には何も触れてこなかったから、しばらくしたら私もすっかり落ち着いた。

 それに学年末テストがあったから、そっちへ強制的に集中することになった。特に学年末は試験範囲が広くて、いつも以上にがんばらないといけなかった。

 2人っきりの下校を除けば、通常モードに戻っていた。

 だから、テストが終わってすぐ、護から思いもよらない提案をされたときには、オロオロしてしまったのだった。