「実はさー、まだ好きってほどでもないんだけど、ちょっといいかもって思ってる子がいるんだよー。で、詳細はまだなんだけど、とりあえず、バレンタインデーの前日に会う約束だけしたんだ」

 村田は、ムフフと笑う。

「バレンタインデーの前日に会ったら、絶対チョコもらえるっしょ。オレって賢くない?」

 オレは少しあきれてしまった。

「ちょっといいかもって程度の女子から、そんなにチョコをもらいたいか?」

「もらいたい。ゼロは悲しい」

「ふうん。そういうもんか??」

「佐藤はその子と小学校からいっしょじゃないかなー。6組の前田さんって子」

 はあっ!? 玲奈???

「じゃあ、おっ先ーー!」

「おい、ちょっと待てよ」

 呼び止めようとしたけれど、村田は帰ってしまった。

 でも、呼び止めたところで、どうする?

 彼氏でもないのに、『玲奈に近づくな』なんて言えない。

 『オレの好きな子だから』って言って、村田に諦めるようにお願いするのも違う。

 玲奈に任せる他ない。

 でも、バレンタインデーの前日に約束しただって?

 悔しい気持ちがこみ上げてきた。