その時、泣き続けるツヤをレオナードが抱き締める。ツヤが「離せ」と言っても決して離さず、ただその目に悲しみと燃えるような感情を浮かべている。

「……ここはレオナードに任せて、僕たちは一旦出ましょう」

ヴィンセントがイヅナの手を引いて歩き出すと、ギルベルトたちもツヤを心配そうに見ながらも部屋を出て行く。

ドアが閉まる前、イヅナが見たのはレオナードが今まで見せたことのない優しい表情でツヤに何かを話しかけている姿だった。



ツヤの過去が明らかになって数日、ツヤはあの部屋に籠りっきりとなり、誰が声をかけてもほとんど言葉を交わさない。

髪はボサボサで寝巻きのままベッドに腰掛け、虚な目で壁をボウッと見ているツヤは少し前の強気な彼女とは別人である。

「ツヤさん!今日、ギルベルトさんに稽古をつけてもらいました。本当は二人でするつもりだったんですけど、何故かヴィンセントとレオナードも来て……」

ツヤの心が少しでも軽くなるように、明るくなるように、そう願いながらイヅナは無理にでも笑い、ツヤに話しかける。