「男性を見て取り乱したって、それってつまり、ツヤさんの記憶が戻ったということなんじゃ……」

その言葉に、全員が驚いた顔を見合わせた。



それから数時間後、ツヤはギルベルトの屋敷に運ばれ、ベッドに寝かされている。イヅナたちは交代でツヤの様子を見ていた。

「ツヤさん……」

不安はなくなったとはいえ、眠っているツヤを前にするとイヅナの胸の中には心配が込み上げてしまう。そして、何故あの時男性に殺意を向けていたのかを知りたくなるのだ。

「うっ……ううっ……」

時おり、ツヤは悪い夢を見ているのか顔を歪めて苦しそうにもがく。そのたびにイヅナは「ツヤさん、ここに私はいます。大丈夫ですよ」と声をかけながら手を握り、もう片方の手で頭を優しく撫でていた。だが、ツヤの荒い呼吸や苦しそうな顔は一向に戻らない。

「ッうう〜……。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

大声を上げ、ツヤの閉じられていた瞼が開く。意識を取り戻したのだ。しかし、気が付いてよかったという思いをイヅナは抱けなかった。