あやかし戦記 千年前の涙

ツヤは先に言おうとしたことをミツヒデに取られてしまい、ムッとしたものの「その通りだよ」と言いたげな目でアサギを見る。感染すれば命を落としてしまう。今は、目には見えない脅威にいつでも命を狙われているのだ。

「畑に行かないと食事が作れないし、味噌などの調味料は買いに行かないと手に入らない。出かけるなと言われてもそれは無理ね」

「じゃあ、私が行くわ。お母さんに行かせるわけにはいかないもの!」

カスミが言ったものの、アサギは考えを変えることはなく、ツヤやカスミ、そしてミツヒデに気付かれないように買い物に行くようになった。そして、病により倒れてしまう。

「母さん……」

「お母さん……」

体の至るところに赤いできものができ、高熱に苦しむアサギにツヤとカスミは付きっきりで看病をした。冷やしたタオルを交換し、少しでも元気になってほしいと花を飾り、痛む腰や四肢に薬草をすり潰して作った薬を塗ったりもした。