あやかし戦記 千年前の涙

ツヤとカスミがわらび餅を食べながら言うと、アサギは「二人は私の宝物よ!」と言いながら抱き付いてくる。その温もりが、重さが、ツヤにとって幸せだった。

この日々がずっと続けばいい。そう願った。でも、その願いが叶うことはなかった。

ある日、街で疫病が流行り始めたのだ。急激な発熱、頭痛、四肢痛、腰痛に始まり、熱は三日ほどで四十度に達してしまう。体に赤いできものができ、意識障害を起こして亡くなるそうだ。

多くの人がその病に倒れ、亡くなっていく。そして、山に囲まれたこの村でも感染者が現れてしまった。

「手洗いとうがいをしっかりしましょう。外出は控えて。必要なら私が行くわ」

アサギがこの村で初めて感染者が出たその日の夜、夕食を食べながら真面目な顔で言った。そのことに対し、ツヤとカスミが口を開く前にミツヒデが大きな声で言う。

「ダメだ!それでアサギが感染したらどうするんだ!街の医者でも治せないんだぞ。こんな村で感染したら……」