「ここと県立病院とのかけもちじゃ、休む暇がないんじゃない?」
「ええ、まあ」

向かいの席に座り静かに話す高城先生に、俺は少しだけ居心地の悪さを感じていた。

高城先生は高城小児科の2代目で街の名士。
この近隣で高城小児科を知らない人はいないし、優しく穏やかな人柄を悪く言う人もいない。
本当に小児科医の鏡みたいな人だ。

「救命は時間も不規則だし大変なことも多いだろう?」
「そうですね」
でも、俺は救命の現場が好きだから、きついと思ったことはない。

「太郎も、一時救命に行きたいなんて言っていたことがあったよ」
「へえー」
初耳だ。

俺が出会った時にはもう太郎は小児科の医者で、いつかは実家を継ぐんだろうと思っていた。

「救命は大変な現場だからね、いい加減な気持ちで行くべきじゃないと説得したんだ」
「そう、ですか」

少しだけ太郎がかわいそうに思える。
せっかく勉強して、苦労して医者になったんだから、好きなことをさせてやればいいのにと思うのはわがままだろうか?

「君は、なぜ医者になったんだい?」
「それは・・・」