2年前。
俺は県立病院の救命科にいた。
研修医から数えて勤務は5年目。
後輩も増え、一人前になった気がしていた。
きっと、気持ちのどこかにおごりがあった。
そんな時、事件は起きた。

おじさんの別荘を借りて行った病院スタッフを集めたバーベキューで、一人の研修医が毒物混入事件を起こした。
幸い全員軽症で事なきを得たが、事件は大々的に報道されることとなり全国的に注目を集めることになった。
加害者も被害者も皆病院の仲間。それが世間の好奇心を掻き立てたらしい。
今思えば誰が悪いわけでもなかったし、事件を起こした研修医自身も精神的に追い詰められた結果の悲劇だった。
それでも、バーベキューを企画した俺や、事件のきっかけになった俺の友人皆川環(みながわたまき)は好奇の目にさらされた。
もちろん、事件のせいで病院の評判も落ちてしまった。
俺の責任が問われることのないようにとおじさんは必死に守ってくれたが、世間の目は厳しくて仕事にも影響が出るようになった。
結果、事件のほとぼりが冷めるまでの約束で俺は大学病院へ出向となった。