目の前を走って来る白衣の集団。
間違いない、あの人たちは私の方へ向かって来る。
それもストレッチャーって・・・

「副院長、大丈夫ですか？」
一番先を走っていた男性が、おじさんに声をかけた。

副院長？
そう言えば、さっき救急外来で患者さんと女医さんが揉めていた時現れたのがこの人だった。

「大丈夫ですか?」
ストレッチャーとともに駆けつけた白衣の男性が、私にも声をかける。

「ええ」

打撲による痛みがあるけれど骨に影響が出るような怪我はなさそう。できればこのまま帰らせてもらいたいんだけど、無理かしら。

「立てますか?」
「はい」

ゆっくりと立ち上がった瞬間ふらついて、横にあったストレッチャーに手をついた。

「そのままこちらに体を預けてください」
どうやら私をストレッチャーに載せるつもりらしい。

「あの、本当に大丈夫ですから」

こんな状態で救急外来に連れ戻されたら絶対に敬に会うことになってしまう。それだけは避けたい。

「お嬢さん、とにかく診察だけでもしましょう」
車に乗っていた男性、副院長先生はどうやら私を帰す気がないらしい。

「ゆっくりと横になってください」

もたもたしているうちに白衣の人数が増えていき、私は半ば強制的にストレッチャーに乗せられてしまった。

まずい、本当にまずい。