5分後。
おじさんが救急外来へ降りてきて、俺たちは空いている診察室へと移った。

「麗子さんお久しぶりですね」
どうやら知り合いだったらしくニコニコと話しかけるおじさん。

「小鳥遊先生。ご無沙汰しています」
さっきまで怒っていた女性の顔色が変わる。

「ご主人とはよく顔を合わせるのに、麗子さんはお忙しいから随分お久しぶりですね」
「え、ええ。主人がいつもお世話になっています」
「いえいえ、そう言えば今日、麗子さん倒れたんですって?」
「ええ」
少しずつ自分の立場が悪くなってきたのを感じてか、女性の声も小さくなる。

「持病があるんだから気を付けないと。ところで、何かうちのスタッフがご迷惑をかけたようで?」
「いえ、そんな・・・」
「どうぞ遠慮なく言ってください。ご主人には公私共にお世話になっているんだから、何か不手際があったのなら私からもお詫びしないと」

こんな言い方をされれば、女性はひくしかない。
わかっていて攻め込むあたりおじさんもなかなかやる。

「お詫びなんて結構です。ただ、あの女医さんがはっきりと説明してくださらないから」

やはり怒りの発端は花田先生らしい。

「そうでしたか、それは申し訳なかった。彼女には私からも注意しておきます」
頭を下げるおじさん。

女性の方はそれ以上文句を言うこともなく、怒りを収めてくれたようだ。