「おはようございます」
「あれ、杉原先生、どうしました?」

勤務の予定がない俺が現れたことで、今日勤務のスタッフたちが驚いている。

「ちょっと忘れ物。それに、気になる患者さんもいるし」
「まじめですねえ」

今日は若手ばかりの勤務らしく、いつもより砕けた雰囲気。
みんなニコニコしていて少し緊張感がない。
こういう時は危険なんだよなと思いながら、処置室奥にあるスタッフルームへ。


「今日って部長が勤務の日じゃなかったけ?」
ちょうど通りすがった救急の師長に声をかけてみた。

たしか、上級医の先生たちは学会に行っていて人手がないからって今日は部長が勤務することになっていたはずだ。
だから他は若手の医師で固めたって聞いた。

「部長、昨日の夜から発熱でお休みです。代わりの先生もいらしていますし、病棟にはベテランの先生もいらっしゃるので、何かあれば応援をお願いします」
「ふーん」

代わりの先生と言っても俺より後輩だし、病棟は病棟で忙しいだろうからすごく不安だけれど、現場の先生がそれでいいって言うんだから俺が口をはさむことじゃないか。

「よかったら杉原先生、手伝って行かれますか?」
「まさか」

週に一度しかない休みを仕事で潰す気はない。
それに、真理愛も待っているし。



スッタフ―ルームで患者さんのカルテを確認し、忘れて帰った書類を持ち、俺は再び処置室へ戻った。

「それじゃあ、失礼します」
挨拶をして待合に出ようとした瞬間、

「いいから、院長先生を呼んできなさいっ」
キーンと響く女性の声が耳に入ってきた。