「鬼はー外、福はー内」

「いてっ、やめろ!」

「やだっ!
鬼はー外。
鬼は―外!」

笑顔でまめを全力でぶつけてくる彼女が怖い。
しかし、自分がまいた種。

「あやまるから!
俺が悪かった!
ごめん!」

「鬼はー外!」

「いてっ、ごめん、ほんとごめんって!」

「……ほんとに悪いと思ってるの?」

豆が投げつけられなくなって、おそるおそる彼女の顔を見ると、泣き笑いだった。

「あんな美人とふたりで食事とかさ。
接待だっていわれても信じられないよ」

「うん。
ごめん。
課長が用があって帰るって言った時点で、俺も帰るべきだった。
ごめん」

ちょっとだけ、ラッキーとかいう気持ちがあっただけに、彼女に少し、後ろめたい。

「……ほんとに浮気じゃない?」

「浮気とかするか。
それに散々おまえが豆ぶつけたおかげで、鬼は出て行ったし」

抱き寄せた彼女は笑顔で、やっと許してくれたようだ。