「……なあ」

「なーに?」

ストローをくわえる彼女の唇に、俺の視線は釘付け。
……なぜなら。

「なんでおまえの唇ってそう、……食いたくなるくらいおいしそうなわけ?」

「そーお?」

ぽってりと厚い、艶やかな赤い唇が綺麗な弧を描く。
それだけで俺の心臓は勝手に動悸を始める。

「食いてえ、その唇」

「……ここで?」

「あ、いや、」

ふふっ、鼻に抜けるような甘ったるい音で彼女が笑った。蜜のかかったような唇にぴったりのその音に、さらに動悸が激しくなる。

「いいよ、あなたになら食べられても」

「え?」

「あなたなら、いいって言ってるの」

立ち上がると彼女が再びふふっと笑った。
慌てて立ち上がり、彼女の手を取る。
そのまま嬉しそうに笑う彼女と一緒に店を出た。