一方で、優星くんとは、あまり話す時間が無かった。

転校したての優星くんは、放課後は部活動を見学に行ったり、友里くんたちと遊びに行ったりと忙しく、学校の中でしか話す機会が無かったのだ。

代わりに、夜は毎日、メッセージのやりとりをしていた。


その日の夜も、机に置いたスマホから、通知音が鳴った。


『今、何してた?』

『小説の続き書いてた。優星くんは?』

『真昼から借りて、エレアル読んでた』


優星くんのメッセージに、私はびっくりして、思わず『え!?』と声が出てしまった。


『優星くん、漫画はあんまり読まないんじゃなかったっけ?』

『そうだけど、2人があんまり楽しそうに話してるから、気になっちゃって。
まだ最初の方なんだけど、面白いね。
必殺技がすっごいかっこよくて、少年漫画って感じ』

『そうなの!
出てくるのはしばらく先だけど、烈華様の必殺技もかっこいいんだよ〜』


『あと、主人公が好きだな。
頼りなくってハラハラするけど、仲間思いで応援したくなる』

喝采(エール)くんね! いいよね〜。
仲間がピンチのときにはしっかり活躍するところとか!』

『って、あんまり小説書くの邪魔してたら、真昼に怒られるな。
明日また、学校で話そうね。おやすみ』

『おやすみ〜。あ、邪魔じゃないからね!』


私は机にスマホを置いた。

時計を見ると、夜10時。

寝るには早い時間だけど、メッセージを切り上げたのは、優星くんの気遣いだろう。

私はパソコンと向かい合いながら考える。

(うーん……キリよく次の章まで書いちゃいたいけど、1時間じゃ無理だよなぁ)

かと言って、書くのを終えるにはまだ早い。


「よし、書いちゃおう!」

遅くとも12時に切り上げれば明日に支障はない……はず。

やめたくても、やめられない。

だって、小説を書くのは、私にとって、烈華様とのデートに等しいんだから。

烈華様のことを考えて文章を紡ぐのは、こんなにも楽しいんだから。