私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「どういう子なのか、誰と仲が良いのか、中学はどこだったのか、今まで彼氏はいたのか……とか。
とにかく色々、片っ端から情報集めてるみたいだって、その子は言ってた」


「…………」


私が動揺して黙っていると、真面目な顔で陽菜が続ける。


「……怖いよね。
とりあえず、私の友達とか部活仲間には、『聞かれても何も知らないって言って』って伝えておいたけど……、心配でさ。

ごめん。深月も怖がるだろうから、言わない方がいいのかなって思ってたんだけど、
知らせないのも良くないかなって思って……。

……でも、やっぱり、知りたくなかったよね、こんなの」


『ごめん』と、小さい声で陽菜が謝った。

私は辛そうな陽菜を見たくなくて、あえて笑顔と明るい声を作った。


「何言ってるの、教えてくれて助かったよ!
知らない方が嫌だもん、そんなの!」

「……どうする? 佐原先生に相談してみる?」

「うーん……でも、あんまり大ごとにしたくないなぁ。
直接嫌がらせされたわけじゃないし、先生もきっと、相談されても困ると思う」


それに、先生が宝城先輩たちに注意したりしたら、余計に先輩たちを刺激してしまうかもしれない。


「でも、他にできそうなことなんて……。
どうすればいいんだろう。
こうなったら、アタシが先輩たちを問い詰めて……」

「ダメだよ! そしたら、今度は陽菜が変なことされるかもしれないじゃない!」

「でも……深月だって嫌でしょ?
陰であれこれ探られるなんて、気味が悪いよ」

「私は大丈夫だよ。宝城先輩たちに知られて困ることなんて、何も無いし!」


……というのは、嘘だけれど。

でも、この学校で私の秘密を知ってるのは、久我山くんだけだ。

彼が私の秘密を誰かに話すなんてことは、絶対にない。