「……み」

「み?」

「…………み、つ────みねさん」

「戻ってる! 名字呼びに戻ってるよ!」


緊張が一気に吹っ飛んで、私はずっこけそうになった。

我ながらややこしい名前だと思うけどね。みつみねみつき。

ちなみに、両親は出生届を出してから、子供の名前が早口言葉みたくなってるのに気づいたらしい。

遅いよ!
《深月》って名前は気に入ってるからいいんだけど!

それはさておき、今は優星くんだ。


「さ、もう一回言ってみよう!」


応援しようとあえて明るい声を上げてみたら、体育会系の部活の声掛けみたいになってしまった。


「……み、みつき…………、……さん」

「いや、だから『さん』はいらないって」

「あー、ごめんっ今は勘弁して!!
家で練習してくるから!」


優星くんは、顔を真っ赤にしていた。


「そ、そこまでしてもらわなくても……」

「いや、明日! 明日までには絶対完璧にするから!」


またもや体育会系部活みたいなテンションになってしまった……。

結局、名前呼びは宿題ということになり、この日は別れ際まで『光峰さん』呼びだった。