私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「俺の名前は、父さんがつけたらしいんだ。
でも、《星》はともかく、《優》はフィーリングで決めたらしいけど。
優しい人間に育つに越したことはない、みたいな?」

「でも、ぴったりだよね。《優しい》って字。
くがや……、……優星くんに」


私が勇気を出して名前で呼ぶと、優星くんはちょっとびっくりした顔をした。


「えぇー。……自分で呼んで、って言ったんじゃない」

「いや、そうなんだけどさ……いきなりすぎて、心の準備が」

「嫌なら戻すよ?」

「や、《優星くん》でいいです」

「なぜに敬語?」


目を逸らす優星くんの様子に、私は首を傾げた。


「あ、私のことも、名前で呼んでいいからね」

「深月さんって? 
……うーん、名前に『さん』付けって、やたらかしこまった感じになるな。
先輩相手みたい」

「あはは、呼び捨てでいいよぉ。友達もそうやって呼んでるし」

「……呼び捨て」


久我山くんは、なぜか緊張しはじめた。

その顔を見ていたら、なぜか私まで緊張してきてしまう。


(……そういえば、男の子に名前呼び捨てで呼ばれるのって、初めてだ)


しかも相手は、烈華様そっくりの顔をした男の子である。

冷静に考えたら、ありがたすぎない?
このシチュエーション。