「……光峰さん、頼むから驚かさないでよ……」


帰り道、久我山くんは頭を抱えていた。


「だって、ああでも言わないと、先輩たち解放してくれなさそうだったし」

「俺はともかく、光峰さんが明日から困るでしょ? みんなの前であんなこと言って」

「全然。私彼氏いないし、ご存知の通り作る予定もないし!」

「そういう問題じゃなくてさぁ……。
宝城先輩たちに、何かされたらどうするの?」

「それ。ちょっと考えたんだけどさ。
宝城先輩たち、露骨な嫌がらせとかはしてこないと思うよ」

「え?」


きょとんとする久我山くんに、私は自分の考えを伝える。


「宝城先輩、陽菜……私の友達曰く、人気インフルエンサーってやつらしいの。
SNSや動画で超人気で、芸能界からもオファーが来てるとか来てないとか。

そんな人が、後輩をいじめたりしないでしょ。
ばれたら炎上するし、フォロワー激減だよ?」

「……宝城先輩、そこまで深く考えるタイプにはあんまり見えなかったけどな。
直情型、考えるより先に手が出るタイプってイメージ」

「いやいや。
宝城先輩、実は結構計算高い人だと思う。
ネットでいろいろ手広くやって人気を獲るって、頭のいい人じゃないとできないことだと、私は思う」


久我山くんには言わないけど、昼休みだってさっきだって、あんなに強引に久我山くんに迫ってたのは、久我山くんが上手く断れないタイプだって見抜いたからだと思う。

他の先輩たちを連れてきたのだって、数の力で久我山くんに圧をかけるためっぽい。
みんな揃って宝城先輩の言いなりみたいだったし。

……とか、そこまで疑うのは、流石に宝城先輩たちに失礼かな。