そして放課後。

「優星くーん! さ、行こ行こ!」


再びやってきた宝城先輩グループは、久我山くんの腕を引き、強引に連れ出そうとしていた。
久我山くんは柔らかい笑みで、なんとかそれをかわそうとしていたけど……。


「すいません、先輩。今日は用事があって」

「えー、用事って何? 昼休みはそんなこと言ってなかったよね?」

「あー……買い物?」

「何の?」

「えーと……コンビニ、ですかね?」


久我山くん……嘘が下手すぎるよ……。


「そんなの後でいいじゃん!」
「てか、コンビニなら帰りに付き合うし!」
「ね、すぐ済むから、行こ!」
「前の学校の話とか色々聞かせてよ!」


案の定、宝城先輩たちの押せ押せモードは揺らがない。
このままでは、先輩たちの強気パワーで久我山くんが連行されてしまう。


(あぁ、もう! 見ていられない!)


私は立ち上がると、つかつかと久我山くんに歩み寄り、勢いのままぎゅっと腕にしがみついた。


「ちょっと、久我山くん! 
放課後は私と、コンビニで新発売のスイーツ買いに行くって約束したじゃん!
早く行かないと売り切れちゃうよ!」

「み、光峰さん!?」


びっくりする久我山くんの横で、ピキッと宝城先輩の額に怒りマークが浮かぶ音が聞こえた気がした。


「は!? あんた、昼休みも邪魔してきた奴じゃん! いーかげんうざいんだけど!?」


宝城先輩が、パープルのアイシャドウに彩られた鋭い瞳で私を睨む。


(こ、怖い……)


周りの先輩たちも、露骨に眉を顰めたり、苛立たしそうに『空気読めよ』とか『生意気』とか、ぼそっと文句を言ってくる。

ごりっごりに私のライフが削られていく。


(でも負けない! 久我山くんのために!)