私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「か、彼女って言っても、フリだよ、フリ!
ほら、そうすれば、宝城先輩や、他の子たちの誘いも断りやすいでしょ!」

「フリ……!?」

「そう、付き合ってるフリ!
誰と付き合ってるのか訊かれたら、私の名前を出してくれて全然構わないし。
それなら、嘘の下手な久我山くんでも、全くのデタラメを伝えるよりは誤魔化しやすいでしょ?」

「……あ、そ、そういうことね……はい。
でも、そしたら光峰さんに迷惑がかからない? 先輩たちに嫌がらせされたり……」

「大丈夫だよ! 学年も違うし、何かあったらみんなに相談するよ」

「みんな?」

「友達とか、クラスメイトとか、先生とか、もちろん久我山くんにも。だから、何にも心配しないで!」



私は胸を張って宣言した。

これぐらい堂々としてないと、きっと久我山くんは頼ってくれない。

私も少しは、転校したばかりで不安だろう久我山くんの役に立ちたい。


「ほら、私、一応学級委員長だからさ! 
転校生のケアもお仕事っていうか?
ね、そうしようよ!」


しかし、久我山くんは渋い顔をして考え込む。


「……ありがとう。でも、やっぱり自分でなんとかするよ。気持ちだけ受け取っとく」


と、気丈な笑みを浮かべた。

教室に戻る途中でも説得を続けていたのだが、最後まで久我山くんは、首を縦に振ってはくれなかった。