私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「辛いことがあっても、烈華様のことを考えるだけで、嬉しくなって、楽しくなって、元気が出てくるの」


例え現実世界で会えなくても、漫画本のページをめくれば、いつだって烈華様はそこにいる。

コミックスを開くときは、まるでデートの待ち合わせに向かうみたいにドキドキして。

何度も何度も読み返しては、その度に烈華様の姿を目に焼き付けて、胸を高鳴らせて。

『あぁ、やっぱり大好きだなぁ』って、再確認する。

そして時々、特にうまく眠れない夜なんかは、ふと。

(どんなに長生きしたって、私は絶対に、死ぬまで烈華様に会えないんだよなぁ……)

って考えてしまって、絶望したりする。


こんな風に私の心を揺さぶるのは、烈華様ただ一人だけだ。

「……ごめん。めっちゃ気持ち悪い話しちゃって、引いたよね?」


私は力なく笑った。

勢いで話しちゃったけど、こんな気持ちは、きっと誰にも理解してもらえないだろう。

なんで話してしまったのか、自分でもわからない。

久我山くんが烈華様にそっくりだからか。
それとも、誰でもいいから信頼できる人に、ふと自分の思いを打ち明けたくなったのか。
一人で抱え込むには、烈華様への私の思いは、重すぎるから。


私の悩みは、烈華様に会えないこと。
そして、もう一つの悩みは、自分が他の子達と違うってこと。

みんな、創作物は創作物として、割り切って楽しんでる。

好きなキャラはいても、それはあくまで《架空のキャラクター》として愛しているのであって、《異性》として愛したりなんかしない。

だから、こんな私はきっと、どこかおかしいんだ。
女の子として……人間として、間違っているんだ。


「……そんなことないよ」


「え?」

「気持ち悪いなんて、絶対に思わない」


久我山くんは、真剣な顔で言った。