私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「??? 烈華様、って確か、真昼と光峰さんが好きなキャラクターだよね? 
あの……名前は忘れちゃったけど、2人の好きな漫画に出てくる」

「『エレアル』ね。正式なタイトルは、『エレメンタ+アルケミカ』」

「そうそう。『エレアル』。
それに恋してるって……アイドルでいうところの、《推し》っていうやつ?」

「ちょっと違う」


私は首を振った。

確かに、私にとって烈華様は、一番応援したくなる対象、いわゆる推しであることには違いない。

でも、それだけじゃない。


「真昼ちゃんと比べるとわかりやすいかな?
真昼ちゃんも烈華様が推しだけど、それはあくまでキャラクターとしての好き。
現実での好きな相手……彼氏は別にいる。

でも私の場合は、現実の男の子に恋するみたいに、烈華様に片思いをしてるの。
だから、現実で彼氏を作りたいなんて、全く思わない」

「……それってつまり、漫画のキャラと付き合いたいってこと?」


考え込む様子を見せながらも、直球に尋ねてくる久我山くん。

私は恥ずかしく思いながらも、頷いた。

「うん。付き合いたいし、手を繋いだりキスしたりもしたい」

「……でも、それって……」


久我山くんは、戸惑いつつも言葉を探しているようだった。

言いたいことはよくわかる。

アイドルなどとは違って、漫画のキャラクターは、この世に存在すらしていない。

漫画家さんが自分の頭の中で作り上げた、架空の人物だ。

付き合うどころか、会うことすらできない。

片想いどころか、恋した時点で失恋しているようなものだ。

それでも。


「……私、烈華様のことを考えるだけで、すごく幸せな気持ちになれるんだ」