私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

教室から離れた私たちは、人目につかない校舎裏に避難した。


「……は〜……! 怖かったぁぁ……」

「ごめんね、光峰さん」

「ううん。久我山くん、困ってるみたいだったから」

「あー……うん。かなり困ってた」


久我山くんは苦笑しつつ、頬を掻いた。

「知らない女の子に話しかけられること、たまにあるんだけど、いつも上手く断れなくて」


そりゃ、これだけイケメンなら、学校でも街中でも、女の子たちが放っておかないだろう。


「でも、今日は特に強烈だったなぁ。
一生忘れられないよ、宝城先輩」

「私も、今まで生きてて一番怖かった……」


むしろ、今までの高校生活で、あの先輩に関わらずに入れたことが幸運だったのかもしれない。

私は、陽菜が言っていた、『宝城先輩は顔で彼氏を選ぶ』という言葉を思い出した。
久我山くんに、きちんと忠告しておかないと。


「……先輩、久我山くんのこと、彼氏にしたいんだと思う。面食いらしいから」

「はは、困ったなぁ……」


力なく笑う久我山くん。


「ねぇ、『彼女がいる』って嘘ついて断っちゃうのはどうかな?
……って、勝手に嘘って決めつけちゃったけど、久我山くんは彼女いないの? 前の学校の子とか」

「いないよ。……実は、女の子ってちょっと苦手なんだ」

「え!? そうなの!?」


私とは普通に話してくれていたから、意外だった。