私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「えー……」


宝城先輩は一瞬不満げにしたが、すぐに勝気な笑みに切り替わる。


「じゃあ、代わりにカラオケ行こうよ!
アタシいい店知ってるんだ〜。
オーナーと知り合いだから、めっちゃ安くしてくれるし、フードとか色々サービスしてくれんの。
ね? よくない?」

「すいません、カラオケ好きじゃないんで」

「じゃ、歌わなくてもいいからさ〜。
全部アタシたちのおごり。
タダで飲み食いし放題とか最高じゃん!」

「いや、先輩たちにそんなことしてもらう理由がないですし……」

「アタシたちが優星くんと仲良くなりたいのっ!
ね、行こうよ、絶対楽しいからっ!」

「そう言われても……」

ぐいぐいと腕を引いてくる宝城先輩の圧に、久我山くんはタジタジだった。


(気乗りしないなら、用事があるとか適当に嘘をついて断っちゃえばいいのに……)


久我山くん、真面目というか、嘘がつけない性格なのかな。

ハラハラしながら見ていたら、久我山くんとばっちり目が合ってしまった。


────言葉はなくても目を見るだけで、久我山くんがすごく困ってるのが伝わってきた。