翌日、ようやく兄が読み終わった週刊少年ダイヴを、私はいそいそと自分の部屋に持っていき、ベッドの上に寝転がってそれを広げた。


「さ、『焙烙(ほうらく)』の続き続き!」


当時一番楽しみにしていた漫画・『焙烙』を読んだ後、掲載漫画を気になっている順に、雑誌を行きつ戻りつ読み進める。


(『グリニッジの悪魔』も読んじゃったし、次は……『エレアル』でいっか)

『エレアル』───『エレメンタ+アルケミカ』は、一番楽しみな漫画というわけではなかった。

たくさん載っている漫画の中のひとつ。
私にとっては、4.5番目に読む漫画という立ち位置だった。

が、その日読んだ回────『エレアル』27話が、私の全てを変えた。

主人公・喝采(エール)の前に現れた新たな敵、焔烈華。

彼の登場シーンを見た瞬間、私はハッと目を見開き、自分の胸がドキドキと力強い音を立てるのを感じた。



『俺は、俺自身の力で、このクソみたいな俺の人生を変えてみせる』



漆黒の髪に鋭い緋の瞳。
不敵な笑みを浮かべ、三日月を背にして立つその姿。

まるで、彼が誌面を乗り越えて私に語りかけてきているかのように、錯覚した。