私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「な、なんとかならないかな?!」

「私たちじゃ無理無理。
友里のグループがいればなんとかなったかもしれないけど、あいつら、昼休みはいつもサッカー部の会議でいないし。

友里たち以外に、あんなモンスター女子軍団に対応できそうなのいないじゃん、うちのクラス」


教室を見回すと、男の子たちはそれぞれ心配そうに久我山くんをチラチラ見ているものの、関わるのを恐れているみたいだった。

それは女の子たちも同様で、私も含めてみんな、おろおろと様子を伺うばかり。

3年の先輩に、表立って何かを言えるようなクラスメイトはいない。

佐原先生は職員室だし……先生を呼びに行ったら、それはそれでおおごとになってしまいそうだ。

私が悩んでいる間にも、先輩たちの攻めは止まらない。


「ね、放課後空けといてよ。学校案内してあげる! 
転校してきたばっかりで困ってるでしょ?」

「あ、いや……お気持ちは嬉しいんですけど、佐原先生に一通り聞きましたから」

「えー、ダメダメ!! あんなのオジサンじゃん!
高校生は高校生同士、学校のことは生徒じゃないとわかんないよねー?」


周りの先輩たちも、『だよねー!』『うんうん!』と宝城先輩に同調する。

私はちょっとムッとした。
私たちの担任の先生を《オジサン》呼ばわりとか、失礼にも程がある。

久我山くんも同じように思ったのか、きっぱりと告げた。

「いえ、本当に結構です。佐原先生がちゃんと細かく案内してくれたんで、何も困ってないです」