私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

昼休み開始を告げるチャイムから少しして、ガラッ!、と教室の扉がやや乱暴に開かれた。

私たち2年3組の教室にぞろぞろと乗り込んできたのは、3年の先輩たちだった。

人数は5人。全員女子で、それぞれ化粧の目立つ派手な容姿をしている。

中でも一際派手で、モデルみたいに美人な先輩が、腰まで伸ばしたウェーブの茶髪を揺らしながら先頭に立っている。

その先輩は、教室を見回した後、『あ!』とある一点を指さした。


「いたいた! ねぇ、キミでしょ! 久我山優星くん!」


その指の先には、戸惑った表情の優星くんがいる。

ウェーブの先輩は足早に久我山くんに歩み寄ると、彼の制服のブレザーの裾をつまんだ。


「うわぁ、まじイケメンじゃん! てか背たかっ! 超タイプなんだけどっ!」


他の先輩たちも、口々に『かっこいー!』とか『当たりじゃん!』とか、黄色い声を上げながら、久我山くんを取り囲んだ。


(な……何事?)


自分の席で話していた私と陽菜は、あまりの出来事にポカン、と口を開けていた。