私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「そ、それより! すごい人気みたいだね、久我山くん!」


私の目線の先には、クラスの女の子たち。

彼女たちの熱っぽい視線の先には、久我山くんがいた。


「久我山くん、見た目はちょっと怖そうだけど、実はいい人っぽいよね」

「私、通学路の途中で久我山くん見かけたんだけどさ、赤ちゃん連れのお母さんの手伝いしてたの。
階段の上までベビーカー持ってってあげてさ。
優しくない!?」

「あの顔で好青年とか、ギャップやばいよね……やだ、ほんと好きになりそう」


(久我山くん、すでに女の子たちの心鷲掴みだよ……)


転校したての久我山くんがうまくクラスに馴染めるか。
ちょっとだけ心配していた私は、ホッとして肩の力を抜いた。


(うん、久我山くん、全然大丈夫そうじゃん!
これなら、私が学級委員長としてお世話を焼く必要もほとんどないね!)


安心した私は、心置きなく、陽菜とのおしゃべりを楽しんだ。

しかし、事件は昼休みに起きた。