私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「でも、わかんないよね、そういうのも」

「え?」

「今はたまたま漫画のキャラに恋してるだけで、次に好きになる人は現実の男の子かもしれないじゃん?

キャラを好きになることを否定はしないけど、『私は絶対に現実の男の子には恋はしない!』って、自分で自分の心を決めつけることもないと思うんだ。

なんせ、人生長いんだし?

相手が、漫画のキャラでも現実の人間でも、男でも女でもどちらでもなくても、年上でも年下でも────、いつ誰に恋に落ちるかなんて、自分にもわかんないんだからさ。

あたしが言いたいのはさ……深月は、自分の心に正直でいればいいって、それだけ」

「……ありがとう。
私は……陽菜が好きな人と幸せになってくれたら、それが一番嬉しいな」

「あはは。現状は可能性ゼロだけどね!」

「ご、ごめん……」

「謝らないでよ。……あたしも、そうなればいいって思うよ。
あー! とりあえず、彼氏作り本気で頑張ってみるかっ!
まだ見ぬ出会いを求めて、西へ東へ!」


その後、私と陽菜は、何時間も話をした。
陽菜に私の書いた小説を見せたら、『よくわかんないけど愛はすごく伝わる』って笑われて。
私の太っていた頃の写真を見せたら、ものすごくびっくりされて。
優星くんや真昼ちゃんのこともたくさん話した。

最後は名残を惜しみながら、陽菜に頼まれて『エレアル』を全巻貸した。


「深月の好きな人のこと、ちゃんと知っておきたいじゃん?」


そう言って、陽菜は笑っていた。