「ううん。あたしが、ムキになって、深月の名前を出したりしたから。

正直言うとね、あたし、深月がうらやましかったんだ。

……佐原先生と仲良い、深月が」

「……陽菜?」

「深月と同じように、あたしも叶わない恋をしてるんだ。
……これが、あたしの秘密」


陽菜はぎこちなく、明るい笑顔を作った。


「誤解しないでよ。先生が、奥さんと子供大好きだってのは知ってるから!
その子供が宝城先輩ってのはびっくりしたけどさ。
……でも、絶対無理だってわかってても、一度恋しちゃったら、その気持ちを消すことなんて、できないじゃん?」

「……うん、わかるよ」


私だって、絶対両思いになれない相手に、5年も恋をしてるんだ。
陽菜の気持ちは、痛いほどにわかる。


「でも、意外。陽菜、可愛い系好きだと思ってたし、ずっと彼氏欲しいって言ってたし」

「う〜ん……アイドルなら間違いなく可愛い系しか好きにならないんだけどね?
自分でも不思議なんだ、そこ」


恋は理屈じゃない。
理屈じゃないから、見込み0パーセントの相手や、全く自分好みじゃないはずの相手に恋してしまうことだってある。


「彼氏が欲しいのだって、嘘じゃないよ。
そこそこ気が合う相手見つけて付き合ってれば、先生のこと忘れられるかもしれないし。

ま、そんなにうまく行かないかもしれないけど?」


ともかく、と陽菜は笑った。


「秘密を持ってたのはお互い様ってことで!
これからはガンガン、本音で話し合っていこうね!」

「うん」


私たちはようやく、本当の意味で親友になれた気がした。