私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「先生、確か、子供さんが2人いて……」

「だから、こいつが長女。あと下に、5歳の息子がいる」

「で、でも、名字、違いますよね?」

「あぁ……『親が同じ学校の先生なんて、バレたら恥ずかしい』って、母親の旧姓名乗ってんだよ、こいつ。

校長も、『気持ちはわかるから』って、特別に許してくれてな。
だから、本名は佐原茉莉花」

「だって、マジ最悪じゃん。
親が教師で、しかも12歳も下の弟がいるなんて、恥ずかしくって友達にも言えないし。

それに、ダサすぎじゃん? 《佐原》とか。
《宝城》のが断然カッコいいし、あたしに合ってるんだもん」

「お前は黙って反省してろ!」


佐原先生は再び、宝城先輩を小突いた。


「今通りがかったばかりで、詳しい経緯はわからんが……うちの奴が迷惑かけたみたいで、すまなかった。
ほら、お前もさっさと頭下げろ!」

「……何よ」

「あぁ?」

「やっぱり、あの噂本当なんじゃん!?
『光峰深月は佐原先生とデキてる』って!」

「「はぁ!?」」


私と佐原先生の声が重なった。