私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

そそくさとお兄ちゃん(inテルルー)と別れた私は、ほっと息をついた。


「は〜。もう、びっくりしたぁ!」

「結局顔分からなかったけど、テルルーの中に入ってたの、深月のお兄さんだったんだね」

「うん。今大学2年なんだけど、いろんなところでバイトしてるみたい。
サークルの飲み会とか旅行でお金が要るんだって。
……まさか、セイレニアでバイトしてるとは思わなかったけど」

「でも、すごいね。大人気みたいだよ、ほら」


優星くんが背後を指さすと、少し離れたところで、テルルーの着ぐるみが女の子たちに囲まれている。

可愛いポーズを次々と決めて、女の子たちとハグや握手までしている。

……変な目的じゃないよね?


「着ぐるみって結構動きづらいって聞くけど、テキパキ動くね、お兄さん」

「昔から運動神経だけはあるんだよね……」


その分、デリカシーに欠けてて無神経なんだけど。


「仲良いんだね」

「良くないよっ!!」


そこだけは断固として否定する。


「いつまでもダイヴ貸してくれないし、テレビのチャンネルも握って離さないし、おまけに最悪に口が悪いし!
さっきも、私のこと《元デブス》とかさ、ひどくない!?
しかも優星くんの前、で……」


口を滑らせた、と私は思ったが、優星くんは首を傾げた。


「……《デブス》って何? 漫画のキャラとか?」


心の健やかな優星くんは、どうやら悪口の類に詳しくないらしい。